・・・こうして意識の内容のいかんと、この連続の順序のいかんと二つに分れて問題は提起される訳であります。これを合すれば、いかなる内容の意識をいかなる順序に連続させるかの問題に帰着します。吾人がこの問題に逢着したとき――吾人は必ずこの問題に逢着するに・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・温泉地からそれらの町へは、いずれも直通の道路があって、毎日定期の乗合馬車が往復していた。特にその繁華なU町へは、小さな軽便鉄道が布設されていた。私はしばしばその鉄道で、町へ出かけて行って買物をしたり、時にはまた、女のいる店で酒を飲んだりした・・・ 萩原朔太郎 「猫町」
・・・ 扨女大学の離縁法は右に記したる七去にして、民法親族編第八百十二条に、夫婦の一方は左の場合に限り離婚の訴を提起することを得と記して、一 配偶者カ重婚ヲ為シタルトキ二 妻カ姦通ヲ為シタルトキ三 夫カ姦淫罪ニ因リテ刑ニ処セラレタ・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・主実主義を卑んじて二神教を奉じ、善は悪に勝つものとの当推量を定規として世の現象を説んとす。是れ教法の提灯持のみ、小説めいた説教のみ。豈に呼で真の小説となすにたらんや。さはいえ摸写々々とばかりにて如何なるものと論定めておかざれば、此方にも胡乱・・・ 二葉亭四迷 「小説総論」
・・・『万葉』の作者が歌を作るは用語に制限あるにあらず、趣向に定規あるにあらず、あらゆる語を用いて趣向を詠みたるものすなわち『万葉』なり。曙覧が新言語を用い新趣味を詠じ毫も古格旧例に拘泥せざりしは、なかなかに『万葉』の精神を得たるものにして、『古・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・ぼくは杭を借りて来て定規をあてて播いた。種子が間隔を正しくまっすぐになった時はうれしかった。いまに芽を出せばその通り青く見えるんだ。学校の田のなかにはきっとひばりの巣が三つ四つある。実習している間になんべんも降りたのだ。けれども飛びあがると・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・ 新しい日本が誕生するならば、その民主的な第一日の暁に、この点が、最も根本的な人権の問題として提起されなければならないのである。 司法省の部内にも種々の動きが在ることを新聞は報じている。そして、その動きは、二枚の種板が一つの暗箱の中・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・ 宇宙の真、美が、すべて直線で定規で引いた様には出来て居ない。 ――○―― 自分の専門以外の事について、あまり明らからしい批評的な又、断定的な言葉を放つものではない。 大抵の時には、悪い結果のみを多く得るもの・・・ 宮本百合子 「雨滴」
・・・ ニージュニ・ノヴゴロド市には、夏になると、昔から有名な定期市が立った。ペルシャの商人までそこに出て来て、何百万ルーブリという取引がある。ニージュニ・ノヴゴロド市の埠頭、嘗てゴーリキーが人足をしたことのある埠頭から、ヴォルガ航行の汽船が・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ ラップはこういう問題を提起したのであった。 文学の組織的生産の問題 五ヵ年計画第二年目にラップ内で提起されたこの問題は非常に一般の注意をひいた。 ソヴェトでこのとき云われた文学の組織的生産という意味は、偶・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
出典:青空文庫