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・・・女学生のでこでこした庇髪が赤ちゃけて、油についた塵が二目と見られぬほどきたならしい。一同黙っていずれも唇を半開きにしたまま遣り場のない目で互に顔を見合わしている。伏目になって、いろいろの下駄や靴の先が並んだ乗客の足元を見ているものもある。何・・・
永井荷風
「深川の唄」
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・・・似合う似合わぬから云っても、場所とか職業とか時代の生活の気分とか、そう云うものが敏感に女の感情の中で捉えられれば、まるで似合わないそしてそぐわないでこでこの装飾的な頭を誰れでも何処へでも持ち廻るという趣味はおかしなことに理解されて来るでしょ・・・
宮本百合子
「女性の生活態度」