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・・・そんな比羅絵を、のしかかって描いているのが、嬉しくて、面白くって、絵具を解き溜めた大摺鉢へ、鞠子の宿じゃないけれど、薯蕷汁となって溶込むように……学校の帰途にはその軒下へ、いつまでも立って見ていた事を思出した。時雨も霙も知っている。夏は学校・・・
泉鏡花
「縷紅新草」
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・・・ 十月の百花園で見たもの 清浦の馬面、ノビリティーナシ 写真 │ 黄蜀葵を一輪とって手に持つ。 秋草。清浦ととりまきの陣笠 婆芸者「百花園さんもさぞよろこんで居りますでしょうよ」 ・・・
宮本百合子
「一九二五年より一九二七年一月まで」