・・・形の樹木でかこまれた工業的都会は農村とどう連絡しているかを、市民の生産的社会労働の核をなす種々な工場が、その性質にしたがって或るものは川岸に、或るものは住宅近く配置されている点を注意してほしい。ユージュ君は託児所について特別関心をはらってい・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・ このヒューマニズムは、文学を社会的、現実的局面とかたく結ぼうとする意慾、現実では分裂の状態におかれている「知性と感性との統一、背馳している意識と行動とに人間的な統一を与え、すこやかに逞しい人生を発見し、創造しよう」と欲する感情において・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・そしてまた、この長編が極めて緻密に史実を調べられ、思想的背景をさぐられ、人物の配置も客観的にされながら、窮極には作者藤村の内面的なムードで統一されていて、その意味からはやはり主観的な写実を脱していないということも面白い。 人道的な感情で・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・と託児所はあらゆる区に配置されている。そして労働法は生後十ヵ月までの子をもつ母親の解雇、姙娠五ヵ月以上の女の解雇をごくごくやむを得ない場合以外は厳禁している。 小学校、工場附属技術学校、いずれも国庫および職業組合の負担で、プロレタリアー・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・は初めから作者によって準備されている一定の結論のために、限度をあんばいして配置された人物の動きによって、全篇をすすめられているのである。 ここで、私たちはもう一遍、横光の主張する自由への道が、どのような社会的モメントに置かれているかとい・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・赤地の左肩に輝く一つの黄色い大きい星に中心をむけて配置されている四つの小さい星は、労働者、農民、小市民、民族資本家をあらわす人民の統一戦線を語っているものであると。ラジオはその時、上海を中心として全生産が回復したというよりも、むしろ増大した・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
・・・本当の野山をいくら捜してもない樹木の配置、木と木との組み合わせ等を狭い都会の空地に故意とらしく造るより、自然の一隅で偶然出会って忘られない印象を与えられた風景の再現を目標として、工夫を凝すなら凝したい。 茶道の名人達は、その感情を深く味・・・ 宮本百合子 「素朴な庭」
・・・という作品は芸術品として見た場合、芸術以前のものであり、読者の大部分に直ぐ誰とうなずけるような歴史的な人物などを配置して、しかもそれが、では、どこまで報告的確実さがあるかというと、その点では小説の方へずり込んでぼやけるような安心を与えない効・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・テーブルの程よいところに眼の衛生を重んじた緑色のカサの卓上電燈が配置されてある。別に独立した小テーブルがいくつかあって、そこではわきに手帖をひろげ、何か専門的な書籍で勉強している人々がある。レーニンの石膏像がこの落着いて知識を吸い込んでいる・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・「文学が永久に人情と背馳すべきものだという運命を負っている筈はないと思って」と。 平林さんは隠微な表現で書いておられるが、平林さんのような作家にでも、非人情という云い表わしは、人情と背馳するだけのものとして理解されるということに、私は反・・・ 宮本百合子 「パァル・バックの作風その他」
出典:青空文庫