・・・ドン・バスの方はその前年全ソヴェト同盟のみならず世界の注目をひいたドイツ技師を筆頭とする国際的生産破壊計画事件が発覚したばかりであった。自分たちがモスクワへ着いたのはその年の十二月。革命十周年祝祭の歓びの亢奮とドン・バス事件に対する大衆の憤・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・ブルジョア・ジャーナリズムさえ、その規模の大さと国際的計画とで、驚きを示さずにいられなかったソヴェトにおける産業党の大陰謀が発覚した。 これまでだって、ソヴェトのプロレタリアートは幾度か国際的な陰謀によって生産妨害を受け、それを撃退して・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・婦女の身としてひそかに見舞うのは、よしや後日に発覚したとて申しわけの立たぬことでもあるまいという考えで、見舞いにはやったのである。女房は夫の詞を聞いて、喜んで心尽くしの品を取り揃えて、夜ふけて隣へおとずれた。これもなかなか気丈な女で、もし後・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・石垣に沿うて、露に濡れた、老緑の広葉を茂らせている八角全盛が、所々に白い茎を、枝のある燭台のように抽き出して、白い花を咲かせている上に、薄曇の空から日光が少し漏れて、雀が二三羽鳴きながら飛び交わしている。 秀麿は暫く眺めていて、両手を力・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・ 丁度その頃この土地に革命者の運動が起っていて、例の椰子の殻の爆裂弾を持ち廻る人達の中に、パアシイ族の無政府主義者が少し交っていたのが発覚した。そしてこの Propagande par le fait の連中が縛られると同時に、社会主義・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
・・・職務が職務なのだから、発覚しては一大事だと思ったということは、僕にも察せられる。ところが、下女は今まで包ましくしていたのが、次第にお化粧をする、派手な着物を着る。なんとなく人の目に立つ。宮沢は気が気でない。とうとう下女の親許へ出掛けて行って・・・ 森鴎外 「独身」
出典:青空文庫