・・・ 富貴な美しいモナ・リザを描くとき、レオナルドがどんなに心をつくして画室をかざり、音楽を奏させ、彼女をたのしくあらせようとしたかという情景は、レオナルド・ダ・ヴィンチを主人公としてメレジェコフスキーが書いた「先駆者」という歴史小説に詳細・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・由にゆき来し、いろいろな作家が、いろいろの鏡、いろいろの角度で、内と外からそれぞれの国の生活を互に映し、互に表現し合い芸術化してゆく愉しさこそは、この地球に生れ合わしたそれぞれの時代の人間の真の歓喜と富貴であると思う。 アンデルセン・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・富豪の思いものとなったのが本当なら、もしや、あのおけいちゃんも、粋と富貴をとりまぜた装で私などのわきは、すーと通りすぎてゆく心になって今日を生きているのでもあるだろうか。 女学校時代の友達というものも、おけいちゃんとはちがう形ではあ・・・ 宮本百合子 「なつかしい仲間」
・・・最もよいと思う人間の生活を創る為なのだから、彼女の理性は、更に大きな要求、子と彼女自身、又良人の希願だと思われた家庭への復帰を認めたのでした。 新しく落付こうとする家庭生活の裡に、ロザリーは、熱心に自分を打ち込もうとしました。すてた仕事・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・そして、文学の面では或る意味で従来はそのものとしては否定されて来た小市民的な要素、言い古された形でのインテリゲンツィア性を文学作品の内容、表現に復帰させ得るきっかけのように、一部の紹介者によって説明された。これには内部的なまた外部的な諸事情・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・「かかる官府の豹変は平安盛時への復帰とも解釈されるし、また政府の思想的一角が今日、俄かに欧化した」とも云い得るかのようであるが、実際には帝国芸術院が出来ると一緒に忽ち養老院、廃兵院という下馬評が常識のために根をすえてしまった。「新日本文化の・・・ 宮本百合子 「矛盾の一形態としての諸文化組織」
・・・だが人間の何か忘られない姿というようなものははたして富貴の輝きに照らされている時ばかりにあるものであろうか。 枕草子の中にこんな場面がある。 ある朝早く、帝と中宮とが並んで身分の軽い者たちが門を出入りしたりしている朝の景色を眺めてい・・・ 宮本百合子 「山の彼方は」
・・・にしろ、ロマンティックな父親の親友の出現ややがては良人となった富貴な保護者の出現で、物語の境遇が変化させられ、ハッピー・エンドになっていて、女主人公たちの内的成長は、始まりから終りまで云わば性格的なもの、気質的なものの範囲から出ていないので・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
・・・ こういう物質的な女性生活の富貴は、しかし立入って見れば彼女達の曇りない幸福を証明するものではなかった。この時代に日本の一般社会には女性に対する支那伝来の厳しい女訓が流布して、貝原益軒の女大学などが出た時期であった。どんなに美事に着飾ろ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・政府は「しかし復員軍人は旧職場に帰れるし、女子労働者の大部分は家庭に復帰するのであるから実際の失業者というものは四百三十万ぐらいのものである」といっている。私達はこの数字を心に留めて、さて昭和七、八年の世界恐慌の時に世界の失業者はどうであっ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫