・・・「月に吠ゆる狼の……ほざくは」と手にしたる盃を地に抛って、夜鴉の城主は立ち上る。盃の底に残れる赤き酒の、斑らに床を染めて飽きたらず、摧けたるこうへんと共にルーファスの胸のあたりまで跳ね上る。「夜迷い烏の黒き翼を、切って落せば、地獄の闇ぞ」と・・・ 夏目漱石 「幻影の盾」
・・・すると犬神はぎゅっとタネリの足を強く握って「ほざくな小僧、いるかの子がびっくりしてるじゃないか。」と云ったかと思うとぽっとあたりが青ぐらくなりました。「ああおいらはもういるかの子なんぞの機嫌を考えなければならないようになったのか。」タネリは・・・ 宮沢賢治 「サガレンと八月」
・・・ おしまは、「お前一人ででかしたようにほざくねえ! おめえが燃すというんならおれだって半こ半こだ! ほらよ、燃してくれべえ」 勇吉の家は、畑中で近所が少し離れている。それだからいいようなものの、火の手は次第に募る。放ってはおけな・・・ 宮本百合子 「田舎風なヒューモレスク」
・・・反対に、集団農場をけなしつける者はほざくにきまってる『へ、碌でなしの牝の子め! お互同士でやってけつかる、柄相応だ!』」「この小説へ出て来る人物のあらかたは何でもない引っかかりで、大した役割は演じてはいない。これに比べて、リベディンスキ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
出典:青空文庫