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・・・決して、たっぷりと開花し、芳香と花粉とを存分空中に振りまいて、実り過ぎて軟くなり、甘美すぎてヴィタミンも失ったその実が墜ちたという工合ではない。謂わば、条件のよくない風土に移植され、これ迄伸び切ったこともない枝々に、辛くも実らしいものをつけ・・・
宮本百合子
「よもの眺め」
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・・・ かれの才能はかつてその個人的な豊富さで世界に注意を促したが、晩年のゴーリキイはソヴェト同盟という歴史に新たな人類の社会的地盤の上において、個人的才能というものが如何ほどの社会性・国際性において実りうるものであるかという典型をしめした。・・・
宮本百合子
「私の会ったゴーリキイ」