・・・ありがもりもりと巣から出るように、地底から、気味悪い迫力をもって、社会の表面へ出ようとするのを感ぜずにはいられません。 もう一つ、これと連想するものに、児童の問題があります。 長い間、児童等の生活は、その責任と義務を、家庭と学校・・・ 小川未明 「近頃感じたこと」
・・・ Kは、わざと下品に、自分でもりもり食べて見せる。 私も、落ちついて一きれ頬ばる。塩からかった。「ひとことでも、ものを言えば、それだけ、みんなを苦しめるような気がして、むだに、くるしめるような気がして、いっそ、だまって微笑んで居・・・ 太宰治 「秋風記」
・・・それゆえ彼女もLの発音を正確に為す目的を以て、いま一週二回の割合いでタングシチュウを、もりもり食べているというのである。タングシチュウは、ご存じの如く、牛の舌のシチュウである。牛の脚の肉などよりは、直接、舌のほうに効目があろうという心意気ら・・・ 太宰治 「女人訓戒」
・・・ 小さかった白い餅のようなものは、もりもりもりもりと拡って、箸でやっと持つ位大きく扁平な軽焼になった。「さ、ちっと冷してから食うと美味いよ。芳ばしくて。――自分で焼いて見なさい」 一太は片手で焙りながら、片手で軽焼を食った。とて・・・ 宮本百合子 「一太と母」
・・・改造社という所は、あの頃もりもり大きくなり、講談社はあの頃から戦争犯罪人になるほど儲け初めた。だんだんいろいろな所で大きな出版をやるようになりました。そうして作家の生活も非常に変って来ました。その変り方を申しますと、いろいろ面白い点がありま・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
出典:青空文庫