一 夫れ女子は男子に等しく生れて父母に養育せらるゝの約束なれば、其成長に至るまで両親の責任軽からずと知る可し。多産又は病身の母なれば乳母を雇うも母体衛生の為めに止むを得ざれども、成る可くば実母の乳を以て養う可し。母体平生の健・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・るし、殊に小さな子供らまでが、何べん叱られてもあのあぶない瀬の処に行っていて、この人の形を遠くから見ると、遁げてどての蔭や沢のはんのきのうしろにかくれるものですから、この人は町へ行って、もう一人、人を雇うかそうでなかったら救助の浮標を浮べて・・・ 宮沢賢治 「イギリス海岸」
・・・ガスよけマスク、飛行機、爆弾、そういうものを拵えてしこたま儲けている工場がどんなひとの使いようをするかといえば、臨時雇いで、しかも給料のやすいおとなしい女ばかりを多く雇う。一日十一時間半も働かす。 満州を足場に日本のブルジョア、地主はソ・・・ 宮本百合子 「婦人読者よ通信員になれ」
・・・権力をにぎっており、議会において多数であるという力を横車に、自分のところでこれまで一枚も出していなかった政党新聞の用紙を日刊十万部分もわり取って、野党の機関紙をひどいのは十分の一ばかりに切り下げようとするやりかたは正当でない。検事総長が「友・・・ 宮本百合子 「平和をわれらに」
・・・内職では決して食べてゆけないのに、その内職がなければ一層窮迫する程度の賃銀しか支払わないのが、いまの雇うものと雇われるものとの関係である。内職は賃銀のダンピングであるにかかわらず、子もちの母は、正当な働き場所を見つけにくい。 外国の諸国・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・ 女中を傭うというので、宿屋の達見のお上さんが口入屋の上さんをよこしてくれた。石田は婆あさんを置きたいという注文をした。時という五十ばかりの婆あさんが来た。夫婦で小学校の教員の弁当をこしらえているもので、その婆あさんの方が来てくれたのだ・・・ 森鴎外 「鶏」
出典:青空文庫