・・・或、真似がたい鷹揚さと云えないこともない。京都や奈良が、決して自分の年功を忘れない老人のようなのと、興味ある対照と思う。 午後になっても、Y切なく、外出覚つかない。番頭、頼山陽の書など見せてくれる。折々、港の景色をぼやかして、霧雨がする・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・殆ど一日居る学校などでは、あんまり人が多勢すぎたり、違った気持ばかりが集って、遠慮で漸う無事に居ると云う様なのがいやなので、あんまり人とも一緒に喋らない様に出来るだけ静かな気持を保つ様にして居るので、かなりゆとりのある自分の家の裏を、暮方本・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
・・・ 天狗は鷹揚に「なんだ、早く云え」と云った。「話では、天狗は変通自在のものだと云います。私もどうせ喰われるからには、どうか一目あなたがほんとの大天狗かどうかを、見て死にたいと思います」 天狗はカラカラと笑って「雑作もないことだ。・・・ 宮本百合子 「ブルジョア作家のファッショ化に就て」
出典:青空文庫