・・・即ち上等社会、銭に不自由なき良家の子供を学者仕立てに教育するの心得なれども、広き日本国中に子を教育するために余財を貯え余暇を有する者は幾人もあるべからず。この輩のためを謀れば、教育の法も上に記すものとは全くその趣を異にせざるを得ず。即ち編首・・・ 福沢諭吉 「教育の事」
・・・西洋諸国良家の女子には此辺の事に就て漠然たらざる者多しと言う。等閑に看過す可らざる所のものなり。新女大学終左の一篇の記事は、女大学評論並に新女大学を時事新報に掲載中、福沢先生の親しく物語られたる次第を、本年四月十四日・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・ けだし社会は個々の家よりなるものにして、良家の集合すなわち良社会なれば、徳教究竟の目的、はたして良社会を得んとするにあるか、須らく本に返りて良家を作るべし。良家を作るの法は、兄弟姉妹をして友愛ならしめ、親子をして親ならしむるにあり。而・・・ 福沢諭吉 「読倫理教科書」
・・・即ち国の本は家にあり。良家の集まる者は良国にして、国力の由って以て発生する源は、単に家にあって存すること、更に疑うべきにあらず。然り而してその家の私徳なるものは、親子・兄弟姉妹、団欒として相親しみ、父母は慈愛厚くして子は孝心深く、兄弟姉妹相・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・いわゆる良家の主婦たちがむすめやむすこと一しょに、それをエロ・グロ雑誌だとも感じないで、いかがわしい雑誌を平気で見ているような無感覚。どんなすじからであろうと、物と金がながれこめば、そのみなもとをせんさくしないのが利口というような社会的責任・・・ 宮本百合子 「民法と道義上の責任」
・・・ いわゆる世にそむき、常識による生活の平凡な規律を我から破ったものとして来ている荷風が、女というものを眺める眼も特定の調子をもっていて、良家の婦女という女の内容にあきたりないのはうなずけることであると思う。荷風の年代で周囲にあった良家の・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
出典:青空文庫