・・・こんなお皿が、二つも三つも並べられて食卓に出されると、お客様はゆくりなく、ルイ王朝を思い出す。まさか、それほどでもないけれど、どうせ私は、おいしい御馳走なんて作れないのだから、せめて、ていさいだけでも美しくして、お客様を眩惑させて、ごまかし・・・ 太宰治 「女生徒」
・・・最後に愉快なルンペン、ルイとエミールが向かって行く手の道路の並行直線のパースペクチヴが未知なる未来への橋となって銀幕の奥へ消えて行くのである。 音響効果としていろいろなモチーフが繰り返される。たとえば刑務所と工場の仕事場では音楽に交じる・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 見事なルイ十六世式の椅子に近代のバネがかけているように。 一九〇五年からあとのロシアの反動期を通じて、チェホフが一見しずかそうな彼の文学の底を貫いてもちつづけた科学性に立つ正義感の水脈をつたわり、つつましいコロレンコが若いゴーリキ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・そして、彼が自分の子供たちに皆マリ、アンヌ、オットウ、ルイなどという西洋の名をつけていたことに思い到り、しかもそれをいずれも難しい漢字にあてはめて読ませている、その微妙な、同時に彼の生涯を恐らく貫ぬいているであろう重要な心持を、明治文学研究・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・研究所に残っている者といえば、心臓が悪くて軍務に適さない機械係のルイと林檎を三つ重ねたくらいの大きさしかない小使女きりであった。キュリー夫人は「万一の場合にはお母さんはこちらに踏み止まらなければなりません」といっていたその通り、パリに止まっ・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・ヌ一派を熱愛して、たまにセザンヌの絵を求めてくる人があると、画室へ自分が案内して選ばせたのだそうですが、その画室には、一枚のキャンバスに小さいモティブの絵がいくつか別々に描かれていて、貧しい愛好家は一ルイ位出して林檎三つを買ってくる、という・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・が、アンリ・バルビュス、ルイ・アラゴン、トリスタン・ツァラ、クウチュリエその他によって、一九三〇年組織された「国際作家同盟フランス支部」の活動やその雑誌『コンミュン』の性質とフェルナンデスの「行動のヒューマニズム」理論が本質的に異ったもので・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 哲学者、教育者としてのルソーの考え方は、フランスのルイ十四世から十六世ごろまでの猛烈な専制主義に対して、人間の平等と自由独立、女も男もひとしい人間性の上に立つ自由を主張した。近代民主主義の先駆者であったルソーのほかに、ヴォルテールやデ・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ 七月革命で、ブルジョアジーの利害の代表者としてのルイ・フィリップが王位に置かれた後は財界の覇者、金銭の威力は極度にふるわれ、企業家で金持ちの成上り貴族によって土地所有者である旧貴族は全く圧倒されるようになった。フランスの社会は、「新た・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・――母は、緑色のドンスを張ったルイ風の椅子に腰をかけ、輝やいた眼を彼方に逸せ、しきりに、白い足袋の爪先をピクピク、ピクピクと神経的に動かして居られる。 自分は黙って、窓際の長卓子の彼方に坐り、正面から三人を見る位置になった。 対等で・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
出典:青空文庫