・・・しかし、さらにもう一歩踏みこんで、もっと科学的な方法で、一定の労働、その労働によるエネルギーの消耗、それに応じて一定の色彩に対する感覚的反応、または音楽音に対する感情の波動が、純粋に実験的なものとして記録されることができたら、どんなに興味あ・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・この頃の日本の交通機関のおそろしい混乱と、そこで敢闘する婦人たちの姿をみたとき、こう迄がんばる日本の婦人が、やがてこの混乱の根本を改革するエネルギーとして自身を見出し、又その方向に真摯な努力をつづける偽りない自身の政党を選別するときが来るこ・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・民主的評論、批評の活動は、あやまった一方的な見かたを正しい関係におき直すために多くのエネルギーを費さなければならなかったが、いわば、そこで息切れした。田中英光の「オリムポスの果実」からはじめられて「少女」「地下室にて」を通り「野狐」その他に・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・歴史が無限のエネルギーを持っているということは、人間の究極の希望と信頼の土台で、それ故に人は自分の一生というものの価値を外見上の一生の現れ以上のところへおいて考えることが出来るのですが、「多少の感慨」は時に中々痛切です。人は同時代人の種々相・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・にこの作者独特のエネルギーと不思議な内部の分裂矛盾を示した。 この年六月十八日にマクシム・ゴーリキイがその多彩多産な六十八年の生涯をモスクで終ったことは、世界に少なからぬ感動をつたえた。ゴーリキイをしてしかく人類的な光彩ある活動と、才能・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・そういう女の甘さや感傷が、自身は暖い炉辺で慰問靴下をあみつつ、美食家のエネルギーで戦線の英雄的行動をしゃべり、スリルを味っている女たちに対する憎悪とともに、どのくらい深刻に思慮ある男、現実の艱苦の中にある男の感情を索漠とさせるものであるか。・・・ 宮本百合子 「祭日ならざる日々」
・・・時代に欠けていた発表場面の自主的な開発、あるいは文学的技術の鍛錬、よりひろい範囲で文学の創造的エネルギーを進歩的な方向において、包括しようとする活動などがそれぞれの刊行物を中心として活溌に行われているわけである。刊行物を中心とするグループも・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・こけおどしの舞台効果のために、人間のエネルギーの浪費が平気でされているとは「ゴトブ」の舞台認識の中にブルジョア劇団の因習がのこっている証明だということを、彼等は理解しているだろうか。テーマに対して群集の有機的な活かしかたこそ、芸術座の「装甲・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・職場からの絵画のなかに、むしろ絵画以前のエネルギーとして表われている可能性は、現実会の作品や前衛美術会の雰囲気のなかに立ち混って、決して容易でない民主的芸術の前途を暗示しているようでした。 あの展覧会には、日本画も幾つか出ていました。日・・・ 宮本百合子 「第一回日本アンデパンダン展批評」
・・・そしてそのういういしく漲るエネルギーによって人間生活のありかたが改めて知覚され、探究され必ず何かの新しい可能もそこに芽生えていて、社会のうちに行為されてゆく。このことは、限りなく美しく、厳粛な事実だと思う。言葉を加えて云えば、わたしたちが二・・・ 宮本百合子 「小さい婦人たちの発言について」
出典:青空文庫