・・・例のごとく「オートミール」を第一に食う。これは蘇格土蘭人の常食だ。もっともあっちでは塩を入れて食う、我々は砂糖を入れて食う。麦の御粥みたようなもので我輩は大好だ。「ジョンソン」の字引には「オートミール」……蘇国にては人が食い英国にては馬が食・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・ 私はそれから何べんも遊びに行ったり相談のあるたびに友だちにきいたりして、それから三年の後には、とうとうファゼーロたちは立派な一つの産業組合をつくり、ハムと皮類と醋酸とオートミールはモリーオの市やセンダードの市はもちろん、広くどこへも出・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・ ○敏感すぎる夫と妻 妻、ひとりで家に居、女中が留守になったので朝食事の用意を簡単にする為、オートミールでもあればよいなと、考えて居る。――夫の着物を火鉢にあぶったり、炭をなおしたりし乍ら。すると、玄関があき夫がかえ・・・ 宮本百合子 「一九二三年冬」
出典:青空文庫