・・・ 一本の足を一寸動かすだけでも、一日の配給量の半分のカロリーが消耗されるくらいの努力が要り、便所へも行けず、窓以外には出入口はないのも同然であった。 その位混むと、乗客は次第に人間らしい感覚を失って、自然動物的な感覚になって、浅まし・・・ 織田作之助 「昨日・今日・明日」
・・・四千三百兆大カロリーとか何とか大体出て参りましょう。今度は牛羊、豚、馬、鶏鯨という工合に今の通りやります。合計二千三百兆大カロリーとか何とか出て来ましょう。両方合せてそれをざっと二十億で割って三百六十五で割って営養研究所の方にでも見てお貰い・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・科学の精神とは、決して食品のカロリー分析の能力ばかりをさしていない。砂糖を食品として科学的に理解するとともに、その砂糖が今日の社会で、どういうありかたをして来ているか、ということについて発見し、それをほんとに民族生活の幸福のために、合理的に・・・ 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
・・・二千九百二十円で、二千四百カロリーはとれない。去年十二月下旬日本銀行の紙幣発行高は、凡そ二〇〇〇億円であった。この二千億という紙幣を百円札で八割、十円札二割とすると、面積六六万平方キロ。長さ八二万キロで地球のまわりの長さの二十倍。高さ富士山・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
・・・共同炊事や栄養食の配給ということは食べるものが清潔であるということが、いって見れば第一条件で、腐った鰯でも、卵でもそれが鰯である、卵であるという名目の上から抽象的なカロリーを計算して、そこに発生している猛毒の作用はぬいて食べさせられるとした・・・ 宮本百合子 「龍田丸の中毒事件」
・・・食糧の問題にしろ、日本の平均男子一人当、平均女子一人当の基本的なカロリーは、御用学者達が権力に媚びた割出し方によって、実際の必要が三千五百カロリーから五千カロリーであるにも拘らず、千数百カロリーで済むという風に規定された。そして配給はそれを・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・婦人の常識に科学性の不足していることもとりあげられるが、たとえばごく身近な栄養の知識について、科学性は今日どんなに表現されているだろう。カロリーということがいわれて、何の総熱量は何と何との総熱量と同量であるから、これとあれとは人体に同じ作用・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫