・・・そこには幾百人の土方や工夫が入っていて、昔からの大木をきり倒し、みごとな石をダイナマイトで打ち砕いて、その後から鉄道を敷いておりました。そこで少年は、袋の中から砂を取り出して、せっかく敷いたレールの上に振りかけました。すると、見るまに白く光・・・ 小川未明 「眠い町」
・・・しまいには、落盤にへしゃがれるか、蝕ばまれた樹が倒れるように坑夫病で倒れるか、でなければ、親爺のように、ダイナマイトで粉みじんにくだかれてしまうかだ。 彼等は、恋まで土鼠のような恋をした。土の中で雄が雌を追っかけた。土の中で雄と雌とがち・・・ 黒島伝治 「土鼠と落盤」
・・・プドーフキンは爆発の光景を現わすのに本物のダイナマイトの爆発を撮ってみたがいっこうにすごみも何もないので、試みにひどく黒煙を出す炬火やら、マグネシウムの閃光やを取り交ぜ、おまけに爆発とはなんの縁もない、有り合わせの河流の映像を插入してみたら・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・すなわちダイナマイトで岩山を破砕する音がそれである。「ドカーン」というかな文字で現わされるような爆音の中に、もっと鋭い、どぎつい、「ガー」とか「ギャー」とかいったような、たとえばシャヴェルで敷居の面を引っかくようなそういう感じの音がまじって・・・ 寺田寅彦 「小爆発二件」
・・・しかるに明治年間ある知事の時代に、たぶん机の上の学問しか知らないいわゆる技師の建言によってであろう、この礁が汽船の出入りの邪魔になると言ってダイナマイトで破砕されてしまった。するとたちまちどこからとなく砂が港口に押し寄せて来て始末がつかなく・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
・・・それでもねもとのダイナマイトの付近だけはたしかに爆裂するので、二三百メートルの距離までも豌豆大の煉瓦の破片が一つ二つ飛んで来て石垣にぶつかったのを見た。 爆破の瞬間に四方にはい出したあのまっかな雲は実に珍しいながめであった。紅毛の唐獅子・・・ 寺田寅彦 「LIBER STUDIORUM」
・・・おらにゃ、ダイナマイトを抑えつけるてな、芸当は打てねえんだからってな。篦棒奴! 発破と度胸競べなんざ、真っ平だよ」 こんな訳であって、――どんな訳があろうとも、発破を抑えつけるなんて訳に行くものではない――岩鼻火薬製造所製の桜印ダイナマ・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
・・・ ――若し、今、こいつに火をつけたら、ダイナマイト見たいに、爆発するに決ってる。俺が海事局へ行ってから、十分に思い知らしてやればいいんだ。それまでは、豆腐ん中に頭を突っ込んだ鰌見たいに、暴れられる丈け暴れさせとくんだ。―― セコンド・・・ 葉山嘉樹 「浚渫船」
・・・ 人員 二三百人 ダイナマイトのきかない岩は何? 日数 二月位。 ○崖中から水がたれて居る。 ○岩の間に菫の小さい葉がしげり出して居る。 ○桑の尺とり虫が出始め、道ばたに青草がしげり出し、くもが這いまわる。・・・ 宮本百合子 「「禰宜様宮田」創作メモ」
国鉄のクビキリが人々の注目をあつめはじめると同時に、列車妨害の記事が毎日、新聞へ出るようになった。九州ではトンネルの入口にダイナマイトをしかけた者さえあった。 そしてそれらの新聞記事は、それらの妨害がどれも鉄道の専門知・・・ 宮本百合子 「犯人」
出典:青空文庫