・・・昇る時は、ドスンドスン、降りる時はころげ落ちるみたいに、ダダダダダ。いやになりますよ、ダダダダダと降りてそのまま御不浄に飛び込んで扉をピシャリッでしょう。おかげで僕たちが、ほら、いつか、冤罪をこうむった事があったじゃありませんか。あの階段の・・・ 太宰治 「眉山」
・・・僕ァこんなところで……僕ァダダ大学生です!」 声を出して咽び泣いている。「五月蠅え野郎だナ。寝ねえか!」 眼の大きい与太者がドス声でどやしつけている。「ねます! ねますッ。僕ァ……口惜しいです。僕ァ……ウ、ウ、ウ……」 ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・心のままに、街から街へ小路から 小路へと霊の王国を彷徨う。或人のように 私は古典のみには安らえない。又、或人のように、眼の眩めくキュービズムにも。ダダも 面白かろう、然しそれとても、私には 折にふれ・・・ 宮本百合子 「初夏(一九二二年)」
・・・そういうわけで、田端の駅は、その高台からまるで燈台の螺旋階段のように急な三折ほどの坂道で、ダダダダと駈けおりたところに在った。その急な小径の崖も赭土で、ここは笹ばかりが茂っていた。穴蔵の中に下りてゆくように夏その坂道は涼しかった。そして、冬・・・ 宮本百合子 「田端の汽車そのほか」
・・・ 第一次大戦の後には、誰にでも知られているとおりヨーロッパには新しい芸術の流派として、ダダイズム、キュビズムなどが広汎な心理分析主義の流行の上に発生しました。第一次大戦によって中流階級が生活の安定を破られ、これまでの社会秩序と価値評価の・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
出典:青空文庫