・・・ことにその誇りとするところはその乳産であります、そのバターとチーズとであります。デンマークは実に牛乳をもって立つ国であるということができます。トーヴァルセンを出して世界の彫刻術に一新紀元を劃し、アンデルセンを出して近世お伽話の元祖たらしめ、・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・パン粉を買い占めたり、チーズを買い占めたり、そして、それを労働者に高くで売りつける。そんなことを常習のようにやっている男だ。みんなに毛ぎらいされていた。「へへ、自分で持って行くがええや」 おやじが去ったあとで、呉清輝は呟いた。 ・・・ 黒島伝治 「国境」
・・・それですからこの派の人たちはバターやチーズも豆からこしらえたり、又菜食病院というものを建てたり、いろいろなことをしています。 以上は、まあ、ビジテリアンをその精神から大きく二つにわけたのでありますが、又一方これをその実行の方法から分類し・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・むしがれいはそろそろたべられるけれど、チーズどうかしら。私は咲枝に「ホラ、こうかいてある御馳走をし……」と笑いました。今日島田へ達治さんのかえったお祝いをかきました。きょうは柔かく暖い日。何ともっともっと喋りたいでしょう。では又。お体をお大・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・何しろ、何を言われても総毛立つというのだから、私としては自分の食べるチーズでも分けて送ってやるしか手がありませんでした。まあ本当によかったわ。この人も泰子も成長の一段階毎にヒキツケてゆかねばならない質です。精神はいつもそういうものですが、こ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・卵をくったり、罐詰をくったり、牛乳またはチーズというようなものとまたもやパンと茶。 ソヴェト同盟では八時間、七時間労働だから四時すぎには仕事からあがる。ほんものの食事はそれからだ。独身者は近所の食堂でスープ二十カペイキ肉か魚野菜つき一皿・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の解放された生活」
出典:青空文庫