・・・ 洋一は帳場机に坐りながら、店員の一人の顔を見上げた。「さっき、何だか奥の使いに行きました。――良さん。どこだか知らないかい?」「神山さんか? I don't know ですな。」 そう答えた店員は、上り框にしゃがんだまま、あと・・・ 芥川竜之介 「お律と子等と」
・・・「I detest Bernard Shaw.」 僕は彼が傍若無人にこう言ったことを覚えている、それは二人とも数え年にすれば、二十五になった冬のことだった。…… 二 僕等は金の工面をしてはカッフェやお茶・・・ 芥川竜之介 「彼 第二」
・・・そうして枯草の間に竜胆の青い花が夢見顔に咲いているのを見た時に、しみじみあの I have nothing to do with thee という悲しい言が思い出された。 巫女 年をとった巫女が白い衣に緋の袴をはいて・・・ 芥川竜之介 「日光小品」
・・・吾とは何ぞやWhat am I ?なんちょう馬鹿な問を発して自から苦ものがあるが到底知れないことは如何にしても知れるもんでない、とこう言って嘲笑を洩らした人があります。世間並からいうとその通りです、然しこの問は必ずしもその答を求むるが為めに・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・たまに酒を呑んだからって、おらあ笑われるような覚えは無え。I can speak English. おれは、夜学へ行ってんだよ。姉さん知ってるかい? 知らねえだろう。おふくろにも内緒で、こっそり夜学へかよっているんだ。偉くならなければ、いけ・・・ 太宰治 「I can speak」
・・・ KLEIST「地震」 KLEIST それにつづいて、四十篇くらい、みんな面白そうな題の短篇小説ばかり、ずらりと並んでいます。巻末の解説を読むと、これは、ドイツ、オーストリア、ハンガリーの巻であることがわかります。・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・V. I. Pudovkin : On Film Technique, 1930.W. Pudowkin : Filmregie und Filmmanuskript, 1928.Bla Blazs : Der sichtb・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ Turumi, Tarumai, Daruma の場合は、活火山だけだとタルマイ一つ、すなわち m = 1 で統計価値があまりに少ないから、消火山も入れて n = 3 の場合を考える。この場合は子音三つであってNの最多数な場合である。・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・尤も大井愛といったような姓名だと Oo I Ai で少し短かすぎ、また Ty So Ga Be Ta R Za E Mon では少しごたごたし過ぎるかもしれない。但し、漢字でかくのと大した変りはない。それにしても日本の学者の論文が外国に紹介・・・ 寺田寅彦 「KからQまで」
・・・乗客が銭を投げると争ってもぐって拾い上げる。I say ! Herr Meister ! Far away, far away ! One dollar, all dive ! などと言っているらしい。自分はどうしても銭をなげる気になれなか・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
出典:青空文庫