・・・しかしこの映画でもっともおもしろいのは、雪の林中でのトナカイと犬との格闘の場面である。トナカイが死地に陥って敢然たる攻勢を取り近寄る犬どもを踏みつぶそうとする光景は獣類とはいえ悲壮である。いかなる名優の活劇でも、これに比べてはおそらく茶番の・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・同じように、トナカイの群れを養う土人の家族が映写されても、それがカラフトのおおよそどのへんに住むなんという種族の土人だかまるきりわからないから、せっかくの印象を頭の中のどの戸棚にしまってよいか全く戸まどいをさせられる。 材木の切り出し作・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
出典:青空文庫