・・・ぽんと本を投げ出して、それから机の引き出しをあけ、チョコレートの箱と、ドロップの缶を取りだし、実にどうにも気障な手つきで、――つまり、人さし指と親指と二本だけ使い、あとの三本の指は、ぴんと上に反らせたままの、あの、くすぐったい手つきでチョコ・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・頭の子音 Bh と B をドロップさせるのがおもしろい。一方でわが国に Buson という消火山のあるのはなおおもしろい。白山の一峰を Bessan というのもこれに類する。これもBを除去すればアソ型となるのである。またこれにつづいて考える・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・その羅宇屋が一風変った男で、小柄ではあったが立派な上品な顔をしていて言葉使いも野卑でなく、そうしてなかなかの街頭哲学者で、いろいろ面白いリマークをドロップする男であった。いつもバンドのとれたよごれた鼠色のフェルト帽を目深に冠っていて、誰も彼・・・ 寺田寅彦 「喫煙四十年」
・・・などと言われて、おしまいにはまたドロップの瓶入りを買わされた。四月三十日 朝からもうクリート島が右舷に見えていた。島というにはあまり大きいこの陸地の連山の峰には雪らしいものが見えていた。まさか雪ではあるまいとハース氏と言っていたが、・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
出典:青空文庫