・・・そのもっとも根本的な点は国際間の複雑な利害矛盾の調整は、封建的で、また資本主義的な強圧であるナチズムやファシズムでは、できなかったという事実である。もっと進歩した、もっと合理的な方法でなくては――ただ殺戮、侵略、武力では、国際間の問題は解決・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・山内義雄氏の翻訳で、どっさりの人に愛読されていたものであったが、ドイツのナチズムとイタリーのファシズムの真似一点ばりだった当時の日本の政府は、敵性の文学であるという理由で、それから益々興味ふかくなる第八巻からあとの出版をさせなかった。「・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・単に自分たちの土地の上からナチスを追いはらったばかりでなく、世界の歴史から、暴虐なナチズムの精神を追いはらったのである。ポーランド人民解放委員会の中に、ワンダ・ワシリェフスカヤという一人の優れた婦人作家が加わっていることをキュリー夫人が知る・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・新聞は、それをナチズムとファシズムの完全な敗北という見出しで伝えた。世紀のよろこび、幸福、美と詩との本質は、その歓呼のうちにききとられたと思う。一言につづめていえば、私たちのこの世紀こそは、大衆とその理性の勝利、民主の世紀であることが、心か・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ファシズム・ナチズムの不条理と非人間らしさと戦って、それに勝利し、人間は最後には理性ある生きものであることを証明した民主主義国――アメリカ・イギリス・ソヴェト同盟・中国その他の国々でも、そこで行ったのは戦争であった。大規模で最も科学的な殺戮・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・反ナチの運動は、決してドイツのナチズムへの遠い抗議でなかった証拠である。インテリゲンツィアがナチスの独裁へ反抗を示すことは、とりも直さず日本のなかで益々独裁を強化して来た絶対主義体制への抗議を意味したのであった。こうして、人民戦線の提唱のと・・・ 宮本百合子 「誰のために」
出典:青空文庫