・・・ハンケチ、前掛、足袋、食卓掛、ナプキン、レエス、……「敷物。畳、絨毯、リノリウム、コオクカアペト……「台所用具。陶磁器類、硝子器類、金銀製器具……」 一冊の本に失望したたね子はもう一冊の本を検べ出した。「繃帯法。巻軸帯、繃帯・・・ 芥川竜之介 「たね子の憂鬱」
・・・紙ナプキンに、色鉛筆でくっきり色濃くしたためられていた。 ――さっき、あたしの舞台に、ずいぶん高い舌打なげつけて、そうして、さっさと廊下に出て行くお姿、見ました。あなたのお態度、一ばん正しい。あなたの感じかた、一ばん正しい。あたしは、あ・・・ 太宰治 「火の鳥」
・・・……暇すぎる年寄の給仕が、時々ナプキンを振って蠅を追って居る。 ――いかにも物懶さと云い、何処やら地から生え抜き日本離れのした雰囲気と云い、面白いのだが、私共は或虫、その他心配で迚も泊る気にはなれなかった。私は旅館の相談旁々、紹介を得て・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
出典:青空文庫