・・・兵卒達は、パルチザンの出没や、鉄橋の破壊や、駐屯部隊の移動など、次から次へその注意を奪われて、老人のことは、間もなく忘れてしまった。 丘の病院からは、谷間の白樺と、小山になった穴のあとが眺められた。小川が静かに流れていた。栗島は、時々、・・・ 黒島伝治 「穴」
・・・ 彼方の山からは、始終、パルチザンがこちらの村を覗っていた。のみならず、夜になると、歩哨が、たびたび狼に襲われた。四肢が没してもまだ足りない程、深い雪の中を、狼は素早く馳せて来た。 狼は山で食うべきものが得られなかった。そこで、すき・・・ 黒島伝治 「渦巻ける烏の群」
・・・まるで、人を殺さなければ小説が出来ないものゝように、百姓も殺せば、子供も殺す。パルチザンでも、朝鮮人でも、日本人でも、誰でも、かれでも殺してよろこんで居る。「橇」とか「パルチザン・ウォルコフ」などを見れば、これはすぐうなずける。彼は又、「二・・・ 黒島伝治 「自画像」
・・・日本軍に追撃されたパルチザンが逃げのびてきたのだ。 遠くで、豆をはぜらすような小銃の音がひびいた。 ドミトリー・ウォルコフは、乾草がうず高く積み重ねられているところまで丘を乗りぬけて行くと、急に馬首を右に転じて、山の麓の方へ馳せ登っ・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・森をくゞりぬけて奥へパルチザンを追っかけたことがある。列車を顛覆され、おまけに、パルチザンの襲撃を受けて、あわくって逃げだしたこともある。傷は、武器と戦闘の状況によって異るのだ。鉄砂の破片が、顔一面に、そばかすのように填りこんだ者は爆弾戦に・・・ 黒島伝治 「氷河」
・・・「露西亜語なんか分らなくったっていゝや、――親爺のあとを継いで行きゃ、食いっぱぐれはないんだ、いつなんどきパルチザンにやられるかも知れないシベリアなんぞ、もうあき/\しちゃった。」 二人だけは帰って行く者の仲間から除外されて、待合室・・・ 黒島伝治 「雪のシベリア」
・・・―― 一九一七年から一八――一九年と革命のパルチザンに参加し立派に村を白軍の蹂躙から守った五十歳の貧農ピョートルが村ソヴェトの議長に選ばれたとする。 議長席に坐る。鈴を振る。タワーリシチ! と演説する。――みんな出来るが、いざ、さあ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ 一九一七―二一年の困難な国内戦の期間、農民がうけもった革命的役割は「赤のパルチザン」の功績にハッキリと現れている。 ソヴェト同盟の第一騎兵隊と云えば、革命第十三年の今日、なおソヴェトの農民の誇りだ。 第一騎兵隊は、ウランゲルの・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・の内での生活は、特に老パルチザンである指導者アントーヌィッチの洞察と生活の意義に対する目標の確固不抜性、人生に対する愛と評価との態度は作者の心に湧いている生きることのよろこびとともに鳴って描かれている。後篇の前半を占めるこの部分は地球の到る・・・ 宮本百合子 「作品のテーマと人生のテーマ」
・・・戦法に於て驚くべきパルチザン闘争をした労働者、農民たちは、文化の面で全く新しい文学作品を送りだした。一人一人の人が当時のソヴェト同盟に於ては新社会建設の英雄であり、自身として喜びと誇りをもって語るべき何物かを持っていたのであった。 私が・・・ 宮本百合子 「新世界の富」
出典:青空文庫