・・・“中央集権”是か非か。“ブルジョア議会”の肯定と否定。“ソビエット”と“自由連合”。労働者側では小野が一人で太刀打ちしている。しかし津田はとにかく三吉が黙っているのは、よくわからぬばかりでなくて、小野の態度が極端なうたぐりと感傷とで、ときに・・・ 徳永直 「白い道」
・・・それは恰も今の社会組織そっくりじゃないか。ブルジョアの生きるために、プロレタリアの生命の奪われることが必要なのとすっかり同じじゃないか。 だが、私たちは舞台へ登場した。 二 そこは妙な部屋であった。鰮の罐詰の内部の・・・ 葉山嘉樹 「淫賣婦」
・・・ 総べてのものは、よりよく生きようとする。ブルジョア、プロレタリア―― 私はプロレタリアとして、よりよく生きるために、ないしはプロレタリアを失くするための運動のために、牢獄にある。 風と、光とは私から奪われている。 いつも空・・・ 葉山嘉樹 「牢獄の半日」
・・・ これは、ブルジョアジーと、プロレタリアートとの間にも通じる。 プロレタリアは「鰹節」だ。とブルジョアジーは考えている。 プロレタリアは、「俺達は人間」だ。「鰹節」じゃない。削って、出汁にして、食われて失くなってしまわねばならな・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
・・・例えば技術詮衡部衛生部その他重要な生産計画部、文化部などがあって、どんな大工場の管理者でもこの工場委員会の決定に従って行動しなければならないようになっている。ブルジョア・地主の工場のように、社長、重役とか主任とか監督とか、威張って搾るばかり・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
・・・当時日本の資本主義は小規模ながら興隆期にさしかかっていて、日本の中産階級が経済能力を増してきていた頃、福沢諭吉がいうとおり、今日のブルジョア民法としての民法改正が行われ封建差別がとりはらわれたのならば、たしかに今のままの条文を適用されるよう・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・そして、明治維新という不具なブルジョア革命は、事実ヨーロッパにおけるように市民による革命ではなくて、下級武士とその領主たちが、一部にふるいものをひきずったままでの近代資本主義社会への移行であった。明治維新の誰でも知っているこういう特質は、「・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
・・・われわれを埃っぽくとりまく実際のきのう、きょうを見わたして、新しい恋愛や結婚が、はたしてブルジョア社会のどこに見出せるであろうか。 子福者小笠原伯爵の何番目かの娘さんが最近スポーツマンであった体躯肥大な某氏と結婚された写真が出ていた。月・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・第一、考えること、思想するということを、現実からはなれることと考えた古いブルジョア文化の分裂した理解こそ、非現実です。日本では、封建の習慣から、女性にはなおさら、むずかしく考えるにはおよばない、という態度が示されました。ところが、現実はどう・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
コンミニズム文学の主張によれば、文壇の総てのものは、マルキストにならねばならぬ、と云うのである。 彼らの文学的活動は、ブルジョア意識の総ての者を、マルキストたらしめんがための活動と、コンミニストをして、彼らの闘争と・・・ 横光利一 「新感覚派とコンミニズム文学」
出典:青空文庫