・・・多数の人物を排した構図ではそれら人物の黒い頭を結合する多角形が非常に重要なプロットになっているのである。 頭髪は観者の注意を強くひきつける事によっておのずから人物の顔を生かす原動力になっている。もしこの漆黒の髪がなかったら浮世絵の顔の線・・・ 寺田寅彦 「浮世絵の曲線」
・・・ だいたいのプロットに従って撮影されたたくさんのフィルムの巻物の中にはたくさんのむだなものが含まれている。とりそこね、とり直しがあり、あるいは撮影の際に得られたその場でのヒントによる余分の獲物もあるであろう。それで、使用されたフィルムの・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ こういう現実味からいうと演劇フィルムは多くははなはだ空疎なものである。プロットにないよけいなものは塵一筋も写さないというのが立て前であるらしい。これは劇の性質上当然のことかもしれないが、舞台で行なわるる演劇とフィルム劇とは必ずしも同じ・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
ある入学試験の成績表について数学の点数と語学の点数の相関を調べてみたことがあった。各受験者のこの二学科の点数をXYとして図面にプロットしてみると、もちろん、点はかなり不規則に散布する。しかしだいたいからいえば、やはり X ・・・ 寺田寅彦 「数学と語学」
・・・た心理の圧迫がロバアタを恐怖させその瞬間の二人の動物的なまた心理的な葛藤から、ついにロバアタが命をおとして、クライドは死刑になるあたりの心理の追究は、ドストイェフスキーの影響をうけて、作品を通俗小説のプロットから救っているようだが、全体から・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・に於けるが如く、プロットの進行に時間観念を忘却させ、より自我の核心を把握して構成派的力学形式をとることに於て、表現派とダダイズムは例えば今東光氏の諸作に於けるが如く、石浜金作氏の近作に於けるが如く、時間空間の観念無視のみならず一切の形式破壊・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫