・・・観音の境内や第六区の路地や松屋の屋上や隅田河畔のプロムナードや一銭蒸汽の甲板やそうした背景の前に数人の浅草娘を点出して淡くはかない夢のような情調をただよわせようという企図だとすれば、ある程度までは成効しているようである。ただもう一息という肝・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・大劇場のプロムナードを練り歩く人の群のような気がした。そして世の中に「閑な人」ほど恐ろしいものはないという気がした。自分がやはりその一人である事などは忘れてしまって。 裏の方の芝地へ廻ってみても同様であった。裁判所だか海軍省だかの煉瓦を・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・今あの往還は海浜のプロムナード国道になるので幅をひろくし、コンクリートにする下拵えですっかり掘りかえされて居ます。もし門がしまっていたら、私が押すからいねちゃん崖をのぼって下さいと云い云い行ったらいい塩梅に門はあいていて、白く浮んだ建物の上・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫