一 彼は若い愛蘭土人だった。彼の名前などは言わずとも好い。僕はただ彼の友だちだった。彼の妹さんは僕のことを未だに My brother's best friend と書いたりしている。僕は彼と初対面の・・・ 芥川竜之介 「彼 第二」
・・・お手紙くだされば、私の力で出来る範囲内でベストをつくします。貴方は、もっともっと才能を誇ってよろし。芝区赤羽町一番地、白石生。太宰治大先生。或る種の実感を以って、『大先生』と一点不自然でなく、お呼びできます。大先生とは、むかしは、ばかの異名・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・T氏の傘を見て This no good. というと、また一人が This good, but that the best. と訂正した。 いわゆる日本街を人力車で行った。道路にのぞんだヴェランダに更紗の寝巻のようなものを着た色の黒い女・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
・・・ts, a book on rain and a manual for meteorological instruments. These are not only undisputedly the best of the kind eve・・・ 寺田寅彦 「PROFESSOR TAKEMATU OKADA」
・・・などがさき頃のベスト・セラーズでした。日配の統計の純文学では「細雪」が第一位です。わたしたちはここでもやっぱり客観的でなくてはいけないと思います。前に、日本の新しいファシズムの一つの現れとして、ルポルタージュに名をかりた戦記もの、秘史に名を・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・は日本でもベスト・セラーズの一つであった。小説をよむほどの若い人々はみんなよんで、一九四七年度の感銘された作品の一つとした。「凱旋門」のどの点に、こんにちの若い日本の精神をとらえた魅力の核があったのだろう。あの小説よかったわ、というひとたち・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・がやすく買えて、労働者農民が電話、自動車をつかう率の高いアメリカでも、全国の経済が下降期にあって、農民の恐怖と、破綻を物語るスタインベックの「怒りの葡萄」がベスト・セラーズとなっているのが当時の社会の現実の面であった。ダイジェストがアンケー・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・政治と文化とを一貫して、世相を押しきったこのような潮流は、一九四九年度の毎日文化賞の準備調査、読売新聞社の良書ベスト・テンの調査などで、諸々批判のおこっている永井ものがトップをしめ、「宮本武蔵」や「親鸞」「風とともに去りぬ」「細雪」「流れる・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・は最近でのベスト・セラーズの一つであったが、この作品について見ると、氏の「私」の社会化は先ず一般的な人間感情への同情を手がかりとしているように思われる。よかれ、あしかれ、所謂人間らしい心によって直接行為し生きてゆく愛すべき人々に氏の「私」は・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ キュリー夫人伝は日本でも昨今ベスト・セラーズの一つであった。大抵の若い人たちは、あの本を愛読して感動した。年をとった人々でも、やはり尊敬をもって、この卓抜な一婦人科学者の堅忍と潔白とが成就せしめた業績を読みとったと思う。だが、キュリー・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
出典:青空文庫