・・・無理矢理、自分のボックスに坐らせて、ゆるゆると厭味を言い出す。これが、怺えられぬ楽しみである。家へ帰る時には、必ず、誰かに僅かなお土産を買って行く。やはり、気がひけるのである。このごろは、めっきり又、家族の御機嫌を伺うようになった。勲章を発・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・では今日は練習はここまで、休んで六時にはかっきりボックスへ入ってくれ給え。」 みんなはおじぎをして、それからたばこをくわえてマッチをすったりどこかへ出て行ったりしました。ゴーシュはその粗末な箱みたいなセロをかかえて壁の方へ向いて口をまげ・・・ 宮沢賢治 「セロ弾きのゴーシュ」
・・・脚本としては “The Silver Box.” “The Eldest Son.” “The Little Dream.” “The Mob.” “A Bit O'Love.” そのほか五六の作があるが、私があちら・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・では、どうぞあしからず、御免下さいませ、とハンケチを握って汗ばんだ面ざしでボックスから出て来たひとを見て、私は何とも云えない気がした。電話さえやっとかけている母親のようにとりつめた物言いをしていたその女のひとの姿を見れば、袴をはき、上被りを・・・ 宮本百合子 「新入生」
・・・る小机に向い、それ等の一枚一枚を私は貪るように繰返し読むのであったが、文面に真心をこめてのべられている弔辞と、自分の胸に満ちている情感とにどこか性質の違うところがあるのを感じ、特にそのことは公衆電話のボックスのような窮屈な箱に入って悔みに対・・・ 宮本百合子 「わが父」
出典:青空文庫