・・・私は、ヴォルガ河で船乗りの生活をして、其の間に字を読む事を覚えた事や、カザンで麺麭焼の弟子になって、主人と喧嘩をして、其の細君にひどい復讐をして、とうとう此処まで落ち延びた次第を包まず物語った。ヤコフ・イリイッチの前では、彼に関した事でない・・・ 有島武郎 「かんかん虫」
・・・ 十五 吼えろヴォルガ 「燃え上がるヴォルガ」(俗名、吼を見た。映画はそれほどおもしろいとは思わなかったが、その中でトロイカの御者の歌う民謡と、営舎の中の群集の男声合唱とを実に美しいと思った。もっと聞きたいと思うとこ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・ゴーリキイが、はじめて、本をよむことを学んだのは、彼が十二三歳になってヴォルガ河通いの蒸汽船の皿洗い小僧になってからだった。同じ船に年配の、もののわかった船員がいて、一つの本をつめた箱をもっていた。彼は少年のゴーリキイと一緒に、自分の読み古・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・一九二七年、このヴォルガ河に面した古い都会はどんな意味をソヴェトのプロレタリアートに対してもっていただろうか? ニージュニ・ノヴゴロド市には、夏になると、昔から有名な定期市が立った。ペルシャの商人までそこに出て来て、何百万ルーブリという・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・単にそう考えるのではなく、全身でそう感じているために、私たちの生活全面にわたっての明るさ、平静さ、確信がヴォルガのように豊かな力で張り切りながら流れてゆく、そういう工合です。私はよくわかっている。私たちの生活で何が大切か、私の勉強について差・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 私の目の前には、ヴォルガ河が見えた。ヴォルガからスターリングラードへ入る埠頭の景色が思い出された。包囲されているときレーニングラードは、その美しい大通りと面白い数々の橋とでつい目の前に浮んできた。モスクワへ侵入軍が迫るという時、私はど・・・ 宮本百合子 「新世界の富」
・・・ 有名な定期市が終った朝、ニージュニ・ノヴゴロドからイリイッチ号という小ざっぱりした周遊船にのって、秋のヴォルガを五日かかってスターリングラードまで下り、そこからコーカサス、チフリスと経て、アゼルバイジャン共和国の首府バクーへ来たのであ・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・モスクワを中心とする黒土地方一帯、ヴォルガ地方、シベリア、北コーカサス地方。そこいらじゅうの集団農場では春の蒔つけ時だ。都会の工場から農村手伝いの篤志労働団が、長靴をはいて、麻袋を背負って特別列車にのっかって、八方へひろがった。 同時・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ 一つの現実に対して、ゴーリキイは丁度ヴォルガ河がその上流から悠々と崖を洗い、草原をひたし、木材の筏を流しつつカスピ海にそそぎ入るように、目についた端の方から、一つずつひろがる流れにまき込んで書いてゆく。どっちかというと自然発生的である・・・ 宮本百合子 「長篇作家としてのマクシム・ゴーリキイ」
・・・mコンコードで会いチュレリーへ行って家のこと話していると太鼓黄金狂時代を見るつもり、だめで Volga Volga ステンカラージンが女を海へすてるところすこしのブドー酒、少しの光線、多くのタンサン瓦斯で、中学生にな・・・ 宮本百合子 「「道標」創作メモ」
出典:青空文庫