・・・ いや、よろしい、卯の一白になります。」 老人は金襴の袋から、穴銭を三枚取り出した。穴銭は皆一枚ずつ、薄赤い絹に包んであった。「私の占いは擲銭卜と云います。擲銭卜は昔漢の京房が、始めて筮に代えて行ったとある。御承知でもあろうが、筮と・・・ 芥川竜之介 「奇怪な再会」
・・・「四十二の一白水星。気の多いとしまわりで弱ります。」 僕はころげるようにして青扇の家から出て、夢中で家路をいそいだものだ。けれど少しずつ落ちつくにつれて、なんだか莫迦をみたというような気がだんだんと起って来たのである。また一杯くわされた・・・ 太宰治 「彼は昔の彼ならず」
・・・「夕刊の運勢欄を見る。一白水星、旅行見合せ、とある。」「一本三銭の Camel をくゆらす。すこし豪華な、ありがたい気持になる。自分が可愛くなる。」「女中がそっとはいって来て、お床は? ということになる。」「はね起きて、二つ・・・ 太宰治 「雌に就いて」
出典:青空文庫