・・・然し、周囲が最善の道として彼女に示す処は、唯その一路であると同時に、彼女自身も若しそれを断然拒絶するとしたら、果して後には何が、よりよき生活として見出されるだろうかと云う危惧を払い得ないのです。 始めそのことを聞いた時、第一自分の胸に来・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・或は少数の努力がその功を十分に発揮せず大勢としては益々衰弱的方向が一路辿られて今日に及んでいるというのは何故だろう。 それこそは、四年前に、批判の精神が自身の性能の本来なる力の放擲をあからさまにしたとき、その根源の理由として、従来文学に・・・ 宮本百合子 「文学精神と批判精神」
・・・「真実一路」につづいて目下「路傍の石」が東西両朝日新聞に連載中である。 さて、この自伝の概略から、読者はどういう感銘を得るであろう。ここには、一人のなかなか人生にくい下る粘りをもった、負けじ魂のつよい、浮世の波浪に対して足を踏張って行く・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
出典:青空文庫