・・・その時分苦労と考えられていたことの内容は、女はどうせ他家の者とならなければならないという運命のうけ入れであり、女はつまるところ三界に家なし、と云われた境遇の踏み出しとしてであったと思う。 今日猶、娘を縁づけます、という言葉で表現する親た・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・「女は三界に家なし」無限の悲哀を誘うこの現実と、生殺与奪の権利をもった男たち、その父、その良人、その息子からさえ監視されて、貞節に過さなければならなかった女の生涯を眺め合わせたとき、私たちは心から慄然とする。女とはどういう生きものと思われて・・・ 宮本百合子 「貞操について」
・・・どんなに美事に着飾ろうとも、女は三界に家なきものとされた。娘の時は父の家。嫁しては夫の家。老いては子の家。それらの家に属する女として存在するばかりで、彼女自身の家というものは認められなかった。しかも、その彼女たちのものならぬ「家」の経営のた・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫