・・・後に「チャップリン黄金狂時代、近日上映」という広告が貼ってあった。龍介はフト『巴里の女性』という活動写真を思いだした。それにはチャップリンは出ていなかったが、彼のもので、彼が監督をしていた。彼がそれを見たのは恵子とのことが不快に終ったすぐあ・・・ 小林多喜二 「雪の夜」
・・・しかし、せんだって上映されたシャリアピンの「ドン・キホーテ」はそういう意味ではむしろ不純なものであったかと思う。自分は今度見たミッキーマウスの中の犬を描いた筆法でドン・キホーテを描いた漫画映画の出現を希望したいと思うものである。 ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・ 同時に上映されたこの二つの映画の対照が自分には興味があった。 キリストの磔刑を演出する受難劇の場面で始まるこのフランス映画には、おしまいまで全編を通じて一種不思議な陰惨で重くるしい悪夢のような雰囲気が立ち込めている。これはもち・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・このような神経の異常を治療するのにいちばん手軽な方法は、講演会場から車を飛ばしてどこかの常設映画館に入場することである。上映中の映画がどんな愚作であってもそれは問題でない、のみならずあるいはむしろ愚作であればあるほどその治療的効果が大きいよ・・・ 寺田寅彦 「映画と生理」
・・・先頃上映されていた「命ある限り」という映画は通俗化されながらも、これまでひたかくされていたこれらの事情をいくらかは人々に会得させたのであった。その犠牲者の妻たちを、私たちはなんと呼んだらいいのだろう。古い言葉をそのままにあてはめれば、彼女た・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・なんぞ上映することを許さないんだ。日本だって、あの作品や「トルクシブ」は「思想善導」されてカットされているんだろう? ソヴェト映画だからって観る側としては無条件によろこべないんだ。 ――それは相当みんな勘定にいれて見ると思う。ソヴ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
出典:青空文庫