・・・「不如帰」「藤村詩集」「松井須磨子の一生」「新朝顔日記」「カルメン」「高い山から谷底見れば」――あとは婦人雑誌が七八冊あるばかりで、残念ながらおれの小説集などは、唯一の一冊も見当らない。それからその机の側にある、とうにニスの剥げた茶箪笥の上・・・ 芥川竜之介 「葱」
・・・と蘆花の「不如帰」 国木田独歩の「愛弟通信」は、さきにもちょっと触れたように、日清戦争に従軍記者として軍艦千代田に乗組んで、国民新聞にのせた、その従軍通信である。云うまでもなく、小説ではない。通信である。それだけに、空想でこ・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・でも「不如帰」でもやはり古典になってしまうであろう、義太夫音楽でも時とともに少しずつその形式を進化させて行けば「モロッコ」や「街の灯」の浄瑠璃化も必ずしも不可能ではないであろう。こんな空想を帰路の電車の中で描いてみたのであった。 このは・・・ 寺田寅彦 「生ける人形」
・・・、日本の「不如帰」徳富蘆花。そして、これらの悲劇は、当時のヨーロッパでさえも結核という病気については、ごくぼんやりした知識しかもたれていなかったことを語っている。肺結核にかかった主人公、女主人公たちは、こんにちの闘病者たちには信じられない非・・・ 宮本百合子 「『健康会議』創作選評」
出典:青空文庫