・・・おかめひょっとこのように滑稽もの扱いにするのは不届き千万さ。」 さて、笛吹――は、これも町で買った楊弓仕立の竹に、雀が針がねを伝って、嘴の鈴を、チン、カラカラカラカラカラ、チン、カラカラと飛ぶ玩弄品を、膝について、鼻の下の伸びた顔でいる・・・ 泉鏡花 「貝の穴に河童の居る事」
・・・部下を指揮する手腕が十分でなかった責任は当然彼の上にかかって来るからだ。不届きな兵タイは、ほかの機会にひどいめにあわしてやることにして、今は、かくしておくことにした。その方が利巧な方法だ。「閣下も討伐の目的が達して、非常にお喜びになるこ・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・厳格な先生のところへ、そういう不届き千万な要求を持ち込むのだから心細い。しかられる覚悟をきめて勇気をふるって出かけて行ったが、先生は存外にこうしたわれわれの勝手な申しぶんをともかくも聞き取られた。しかしもちろんそんなことを問題にはされるはず・・・ 寺田寅彦 「田丸先生の追憶」
・・・まえたちはあくびをしたりいねむりをしたりしながら毎日を暮して食事の時間だけすぐ近くの料理屋にはいる、それから急いで出て来て前の者がまだあまり遠くへ行っていないのを見てやっと安心するなんという実にどうも不届きだ。それからおれがもうけるんじゃな・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
出典:青空文庫