・・・が、何でも五言絶句ばかりが、総計十首か十五首しかない。その点は僕によく似ている。しかし出来映えを考えれば、或は僕の詩よりうまいかも知れない。勿論或はまずいかも知れない。 芥川竜之介 「小杉未醒氏」
・・・妻の一言いう中に母は三言五言いう。妻はもじもじしながらいう。母は号令でもするように言う。母は三言目には喧嘩腰、妻は罵倒されて蒼くなって小さくなる。女でもこれほど異うものかと怪しまれる位。 母者ひとの御入来。 其処は端近先ず先ずこれへ・・・ 国木田独歩 「酒中日記」
唐詩選の五言絶句の中に、人生足別離の一句があり、私の或る先輩はこれを「サヨナラ」ダケガ人生ダ、と訳した。まことに、相逢った時のよろこびは、つかのまに消えるものだけれども、別離の傷心は深く、私たちは常に惜別の情の中に生きてい・・・ 太宰治 「「グッド・バイ」作者の言葉」
・・・ 漢詩の五言、七言の連続も、何かしらある遠い関係を思わせる。例えば李白の詩を見ても、一つの長詩の中に七言が続く中に五言が交じり、どうかすると、六言八言九言の交じることもある。四言詩の中に五言六言の句の混入することもあるのである。 中・・・ 寺田寅彦 「短歌の詩形」
・・・ 元来閭は科挙に応ずるために、経書を読んで、五言の詩を作ることを習ったばかりで、仏典を読んだこともなく、老子を研究したこともない。しかし僧侶や道士というものに対しては、なぜということもなく尊敬の念を持っている。自分の会得せぬものに対する・・・ 森鴎外 「寒山拾得」
出典:青空文庫