・・・ピアニスト井上園子や草間加寿子が何故金持の息子と結婚しなければならなかったかということを考えれば、男女に関らず、夥しい人の才能というものが、今日めぐり合っている経済的な殺戮を思わない人はないだろう。これは資本主義社会につきものである。民主的・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・ 永井荷風によって出発したジャーナリズムは、インフレーションの高波をくぐって生存を争うけわしさから、織田作之助、舟橋聖一、田村泰次郎、井上友一郎、その他のいわゆる肉体派の文学を繁栄させはじめた。池田みち子が婦人の肉体派の作家として登場し・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
六月下旬にパリで四日間に亙って開催された国際ペンクラブの第十五回大会に、有島生馬氏や井上勇氏、久米正雄氏などが出席したことが新聞に出ている。その議事日程の中、委員付託による四つの問題の検討がされている。世界文学に今日のスタ・・・ 宮本百合子 「ペンクラブのパリ大会」
・・・学校にも殆ど出席せずふらふらした生活を送る。井上正夫、桝本清氏等と謀り野外劇を創む。 一九一四年。第三次『新思潮』を起す。「女親」を同誌に発表。二高で高等学校の検定試験を受け及第。大学の本科生となる。学資欠乏し、郷里の大塚氏より十ヵ月間・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・ 酉の下刻に西丸目附徒士頭十五番組水野采女の指図で、西丸徒士目附永井亀次郎、久保田英次郎、西丸小人目附平岡唯八郎、井上又八、使之者志母谷金左衛門、伊丹長次郎、黒鍬之者四人が出張した。それに本多家、遠藤家、平岡家、鵜殿家の出役があって、先・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
・・・前便に申上候井上の嬢さんに引き合せくれんと、谷田の奥さんが申され候ゆゑ、今日上野へまゐり、只今帰りてこの手紙をしたため候。私と谷田の奥さんとにて先に参りをり候処へ、富子さん母上と御一しよに来られ、車を降りて立ち居られ候高島田の姿を、初て見候・・・ 森鴎外 「独身」
・・・ この書の成るに当たって、永い間本を借してくだすった井上先生、大塚先生、小山内薫氏、本を送ってくだすった原太三郎氏、及び本の捜索に力を借してくだすった阿部次郎氏、岩波茂雄氏に厚くお礼を申し上げる。 大正四年八月鵠沼にて・・・ 和辻哲郎 「「ゼエレン・キェルケゴオル」序」
・・・東京転任に先立つ数か月、四十二年四月に上京せられた際には、井上、元良などの「先生」たちを訪ねていられるし、また井上、元良両先生の方でも、田中喜一、得能、紀平などの諸氏とともに、学士会で西田先生のために会合を催していられる。田中、得能、紀平な・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫