・・・八、九歳頃の彼はむしろ控え目で、あまり人好きのしない、独りぼっちの仲間外れの観があった。ただその頃から真と正義に対する極端な偏執が目に立った。それで人々は「馬鹿正直」という渾名を彼に与えた。この「馬鹿正直」を徹底させたものが今日の彼の仕事に・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・なんだか人好きの悪そうな風景画や静物画に対するごとに何よりもその作者の色彩に対する独創的な感覚と表現法によって不思議な快感を促されていた。それはあるいは伝習を固執するアカデミックな画家や鑑賞家の眼からは甚だ不都合なものであるかもしれないが、・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・すると一人の活溌に話している女優さんが、「あたしは始から、そんな人好きにならないわ」と至極明快に断言しているのです。すると吉屋女史が、「ほんとうにお金の無い人との結婚はするものじゃありませんよ」というような意味のことを云っておられました。そ・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
出典:青空文庫