・・・という言葉をおぼえて来て、そのころ、しきりにそれを繰り返していたそうだが、妻は、それが今回のことの前兆であったと、御幣をかついでいた。それももっともだというのは、僕が東京を出発する以前に、ようやく出版が出来た「デカダン論」のために、僕の生活・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・末尾に少しずつ何か書くことになっているとはいうものの、それは読者の自由な鑑賞を妨げないように、出しゃばった解説はできるだけ避け、おもに井伏さんの作品にまつわる私自身の追憶を記すにとどめるつもりなので、今回もこの巻の「青ヶ島大概記」などを中心・・・ 太宰治 「『井伏鱒二選集』後記」
・・・ さて、それでは今回は原作をもう少し先まで読んでみて、それから原作に足りないところを私が、傲慢のようでありますが、たしかに傲慢のわざなのでありますが、少し補筆してゆき、いささか興味あるロマンスに組立ててみたいと思っています。この原作に於・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・られ候ところも、むりしての御奉仕ゆえ、本日かぎりよそからの借銭は必ず必ず思いとどまるよう、万やむを得ぬ場合は、当方へ御申越願度く、でき得る限りの御辛抱ねがいたく、このこと兄上様へ知れると一大事につき、今回の所は私が一時御立替御用立申上候間、・・・ 太宰治 「帰去来」
・・・さて今回本紙に左の題材にて貴下の御寄稿をお願い致したく御多忙中恐縮ながら左記条項お含みの上何卒御承引のほどお願い申上げます。一、締切は十二月十五日。一、分量は、四百字詰原稿十枚。一、題材は、春の幽霊について、コント。寸志、一枚八円にて何卒。・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・けれども、あの山椒魚の失敗にしても、またこのたびの逸事にしても、先生にとっては、なかなか悲痛なものがあったに違いない、と私には思われてならぬので、前回の不評判にも懲りずに、今回ふたたび先生の言行を記録せむとする次第なのである。先生の失敗は、・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・れに、君の亭主は、気が弱くて、街頭に出て、あの、いんちきの万年筆を、あやしげの口上でのべて売っているのだが、なにせ気の弱い、甘えっ子だから、こないだも、泉法寺の縁日で、万年筆のれいの口上、この万年筆、今回とくべつを以て皆さんに、会社の宣伝の・・・ 太宰治 「春の盗賊」
・・・「そうでもないわよ。今回だけは、大出来よ。」「そうかね。」末弟の小さい眼は喜びに輝いた。「ねえさん、うまく続けてくれたかね。ラプンツェルを、うまく書いてくれた?」「ええ、まあ、どうやらね。」「ありがたい!」末弟は、長女に向っ・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・TaraweraTalasiquinTultulTurrialbaTjilering このほかにまだコマ・カンプ型、クジウ型およびイワウ型があるがこれは今回は略し、他日の機会に譲ることとする。・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・ある外国の新聞に今回の地震の地震計記象を掲げた下に Japanese Earthquake reduced to line. と題してあるのを面白いと思って見たが、実際計測的研究者にとっては研究の対象は地震よりはむしろ「線に直した地震」であ・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
出典:青空文庫