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・・・埠頭から七マイルの仏寺へ向かう。途中の沼地に草が茂って水牛が遊んでいたり、川べりにボートを造っている小屋があったり、みんなおもしろい画題になるのであった。土人の女がハイカラな洋装をしてカトリックの教会からゾロゾロ出て来るのに会った。 寺・・・
寺田寅彦
「旅日記から(明治四十二年)」
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・・・仏教の形式と、仏僧の生活とは既に変じて、芭蕉やハアン等が仏寺の鐘を聴いた時の如くではない。僧が夜半に起きて鐘をつく習慣さえ、いつまで昔のままにつづくものであろう。 たまたま鐘の声を耳にする時、わたくしは何の理由もなく、むかしの人々と同じ・・・
永井荷風
「鐘の声」