・・・ それで唯一の科学的方法はこれらのあらゆる不確実な伝説や付会説をひとまず全部無視して、そうして現在の山名そのものを採り、全く機械的に統計にかけることである。たとえば硫黄岳とか硫黄山と言っても、それがはたして硫黄を意味するものであるか実は・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・を出さないように、つまりだれにも咎を負わさせないように、実際の事故の原因をおしかくしたり、あるいは見て見ぬふりをして、何かしらもっともらしい不可抗力によったかのように付会してしまって、そうしてその問題を打ち切りにしてしまうようなことが、つり・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・土佐の海岸どこに立って見ても東西に陸地が両袖を拡げたようになっているから、この附会は附会として興味がある。もしこれがアイヌだとすると、隣国讃岐は「サンノッケウ」すなわち顎であろう。能登がアイヌの「ノト」頤である事は多くの人が信じている。・・・ 寺田寅彦 「土佐の地名」
・・・ もっとも、なんと言っても音楽は音楽、連句は連句であるから、あまり無理な比較をしようとすれば結局はなはだしい付会に陥るにきまっている。これについては最初から用心してかかる必要がある。しかしこの用心を頭の中に置いた上で、試みにいかなる程度・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・ あるいはこの三つの植物の繁殖力の旺盛な事に関する侵入者の知識がこの現象の原因になるかと思ってみたが、それもあまりに付会に過ぎた説明としか思われない。 いろいろの花がいろいろの蝶や虫を引きつける能力についてはまだおそらく人間の知らな・・・ 寺田寅彦 「路傍の草」
出典:青空文庫