・・・よって実行された十七日女給の試みが、最も無邪気な貴族令嬢の映画好みのアバンチュールまたは、ナンセンスな茶目ぶりと解釈されるにしても、やはりそこには、良子嬢がああいう階級の一部の若い連中のひそかな興味の代弁人であったことだけは顕著なのである。・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・そして実は彼の敵であった階級の詐術にかかり、最後にはその安定を強化するための思想的代弁人の地位にさえずり込んだ悲劇の担い手としての不屈な姿を今日に示しているのである。 しかもバルザックが遭遇したような歴史的めぐり合わせは、資本主義による・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・例えば、民法第十四、五条、第七百八十八条、七百八十九条、八百一条、第八百十三条、最も注意すべき、刑法第百八十三条等に就いて何とかなさるべきであるとは感じてもそれ等を、自分達の問題として、適切に考究する代弁者を、女性は持ちません。 積極的・・・ 宮本百合子 「法律的独立人格の承認」
・・・における梶の見解、その見解に全然一致している作家横光の見解は、果して今日の日本の何人の生活感情を代弁し得ているであろうか。 義理人情が、日本の文学的伝統の中で芸術的表現を与えられたのは、義理といい人情という、この世の外的内的なしがらみを・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・この点ではこの『娘時代』の著者を必ずしも自分たちの典型的代弁者とはしない一部の若い世代も存在しているのだと思う。道学流の見地からでなく、人間がこの社会に生きてゆく生活力、人間性そのもののもつ合理性によってさばけることで目先にもたらされるゆと・・・ 宮本百合子 「若い婦人の著書二つ」
・・・ ほんの一部の例にすぎないこれらの作家たちは、芸術家としての精髄を注いで、虐げられた稚い肉体と精神のために代弁している。時代をとびこして今日の私たちの心をしっかりととらえる情熱を傾けて、いずれもその作家たちの代表的な作品として生み出して・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
・・・それ故、確りした、ものの云える女性は、我知らず女全体の代弁者的立場に自分を置き、冷静に批評した男性を作中に描いた。第三には、女性が、多く、性慾と愛との区別さえも自覚しない精神力の軟さを持つ点にも関係がありそうに思う。男性に対する時、大抵の女・・・ 宮本百合子 「わからないこと」
・・・等を経て、どこまでも大衆の発展・建設とともに自分を拡大し、晩年のゴーリキイはまったく大衆の最も尊敬すべき代弁者となった。 かれの才能はかつてその個人的な豊富さで世界に注意を促したが、晩年のゴーリキイはソヴェト同盟という歴史に新たな人類の・・・ 宮本百合子 「私の会ったゴーリキイ」
出典:青空文庫