・・・これを生み、これを養い、これを教えて一人前の男女となし、二代目の世において世間有用の人物たるべき用意をなし、老少交代してこそ、始めて人の父母たるの名義に恥ずることなきを得べきなり。 故に子を教うるがためには労を憚るべからず、財を愛しむべ・・・ 福沢諭吉 「教育の事」
小学教育の事 一 教育とは人を教え育つるという義にして、人の子は、生れながら物事を知る者に非ず。先きにこの世に生れて身に覚えある者が、その覚えたることを二代目の者に伝え、二代目は三代目に授けて、人間の世界の有・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・ 三代目ということは、日本の川柳で極めてリアルに抉って描写されているが、今から先の三代目という時代の日本というものを文化の面でも切実深甚に考慮しなければならないのだろうと思う。世界は複雑に複雑にと推移しているのだから、単純きわまる主観人・・・ 宮本百合子 「明日の実力の為に」
・・・ ルーテルの何代目の孫だとか云う男が、人々の間を游ぎ廻ってしきりに何か説いて居る。 一代目よりは体もやせこけて、ピコピコした様子をして居る。 こわれたカブトを気にして居るナイトのドンキホーテと同じ木の根に腰をかけて仲よくして居る・・・ 宮本百合子 「暁光」
・・・生年月日 職業 過去の健康状態 父母と弟妹の健康状態――祖父さんに性病はありませんでしたか 生物遺伝子は三代目のモルモットに最も興味がある。――然し自分は祖父の顔さえ覚えて居ない。私は手をひろげて云った。――この答えはむずかしい・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・なひとで、嵐雪も俳諧のほかは翁を外し逃げなど致候由、と二代目団十郎の書いたもののなかに語られている。 同時代の芸術家として、近松門左衛門や井原西鶴等の生きかたと芭蕉の生涯とは今日の目におのずから対比されて様々に考えさせるところがある。宗・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」
・・・ この社会の木鐸をもって任じた雑誌ジャーナリズムは、先ず経営の方面から近代資本の力に支配されはじめ、当時から見れば二代目或は三代目の今日のジャーナリズムは、更に歴史の推進によって、資本の力と、その力を強め守ろうとする二重の力に少からず左・・・ 宮本百合子 「微妙な人間的交錯」
・・・ もうこの頃には、どこの開墾村でも初代の移住者たちは年をとって、二代目が中堅となっており、村役場の三層楼も年とともに古びて来た。郡山が膨張して、附近の村々の若いものはそこの工場で働くようになったし、大戦のころ米価暴騰につられて田地を買い・・・ 宮本百合子 「村の三代」
・・・ 中国の歴史がうつりかわるにつれて揚子江沿岸の軍閥が擡頭して、白人の事業を破滅に導き、それがやがて辛じて老父の屍を葬る二代目イーベンをせき立てて宜昌から遁走させる「偉大なスローガン」の怒号と高まって来るまで、作者は身についている揚子江航・・・ 宮本百合子 「「揚子江」」
・・・徳川将軍は名君の誉れの高い三代目の家光で、島原一揆のとき賊将天草四郎時貞を討ち取って大功を立てた忠利の身の上を気づかい、三月二十日には松平伊豆守、阿部豊後守、阿部対馬守の連名の沙汰書を作らせ、針医以策というものを、京都から下向させる。続いて・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫