・・・それはボスニア産のプリュウン二千俵を買って、それを仲買に四分の一の代価で売り払った時の事である。これ程の大損をさせるプリュウンというものを、好くも見ずに置くのは遺憾だと云って、時計の鎖に下げたのである。またある時はどこかの二等線路を一手に引・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・こうして見ると、直接農村に一般ラジオ加入者が多くなったとは云えず、寧ろ、中農、地主から没落した自作農等の相場への関心或は農産品仲買関係者が、米や繭の売買で幾分かは儲けてラジオでも引こうかという工合になっていることが推察されるのである。 ・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・四十三年貧困と戦い続けた効あって、昨夜漸く春蚕の仲買で八百円を手に入れた。今彼の胸は未来の画策のために詰っている。けれども、昨夜銭湯へ行ったとき、八百円の札束を鞄に入れて、洗い場まで持って這入って笑われた記憶については忘れていた。 農婦・・・ 横光利一 「蠅」
出典:青空文庫