・・・わたしは馬政紀、馬記、元享療牛馬駝集、伯楽相馬経等の諸書に従い、彼の脚の興奮したのはこう言うためだったと確信している。―― 当日は烈しい黄塵だった。黄塵とは蒙古の春風の北京へ運んで来る砂埃りである。「順天時報」の記事によれば、当日の黄塵・・・ 芥川竜之介 「馬の脚」
・・・ 氏子は呆れもしない顔して、これは買いもせず、貰いもしないで、隣の木の実に小遣を出して、枝を蔓を提げるのを、じろじろと流眄して、世に伯楽なし矣、とソレ青天井を向いて、えへらえへらと嘲笑う…… その笑が、日南に居て、蜘蛛の巣の影になる・・・ 泉鏡花 「茸の舞姫」
・・・農民一(登場 枯れた陸稲「稲の伯楽づのぁ、こっちだべすか。」爾薩待「はあ、そうです。」農民一「陸稲のごとでもわがるべすか。」爾薩待「ああ、わかります。私は植物一切の医者ですから。」農民一「はあ、おりゃの陸稲ぁ、さっぱりお・・・ 宮沢賢治 「植物医師」
出典:青空文庫