・・・、中国、朝鮮をこめての東洋と西欧の民主主義をうちたて、世界の平和を守ろうとするすべての人々は、めいめいの日常生活のなかに、こまごまとした形ではいりこんで来ている問題として、ファシズムに反対し反民主的な侵略戦争に反対しなければ平和も民主主義も・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
この集には、一九三七年、三九年、四〇年の間にかいた十篇の小説と亡くなった父母について記念のための随筆二篇が収められている。 一九三七年と云えば、中国への侵略戦争を拡大しながら日本の内部のあらゆる部面に軍事的な専制が強力・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・ 日本の侵略戦争はとめどなく拡大されて行った。そして「非常時」が、あらゆる理性と文化を抹殺しはじめて横光利一の「高邁」の力よわさをあらわし、「自由な自意識」の存在は不可能であることを明瞭にしてゆくにつれ、日本の文化知識人の間に、文化擁護・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・一九四一年一月からはじまった第二回の執筆禁止は、一九四五年八月十五日、日本の侵略的な天皇制の軍事権力が無条件降伏をするまで、五年の間つづいた。 中断されたこの時期に、評論集としては、『昼夜随筆』『明日への精神』『文学の進路』などが出版さ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・ 一九三二年の春からのち、日本のすべての人の生活がはげしいファシズムの笞で侵略戦争に追いこまれはじめた。侵略戦争の遂行のためにわたしたち人民の口はふさがれ、眼にカーキ色の幕がはられた。バイカル湖まではこちらで貰うというようなことがしらふ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『モスクワ印象記』)」
・・・デュガールは、第一次ヨーロッパ大戦を終ったあとのフランスで、ファシズムの文化侵略に対する広汎な人民戦線の結成されたフランスで、主人公ジャックの人間形成のモメントを以前の人々のようにただその人にとっては深い意味をもつ日々の身辺的小事件の累積に・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・ これまで文化は、生活にゆとりのある階層の占有にまかされて来た。侵略戦争がはじめられて、それまでの平和と自由をのぞむ文化の本質が邪魔になりはじめたとき、谷川徹三氏の有名な文化平衡論が出た。日本に、少数の人の占有する高い文化があり、一方に・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・とが半ば封建的で、ただの一度も権力にたいする批判力としての自主性、自身を建設する力としての自立性をもたなかった伝統にわずらわされ、つまりは戦争遂行という野蛮な大皿の上に盛りつけられて、あちら、こちらと侵略の道をもち運ばれなければならなかった・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・歴史のありのままの表現で語れば、日本のおくれた資本主義は、日清戦争から十年後に経たこの侵略戦争で再び中国の国土を血ぬらし殖民地化しながらその興隆期に入ったわけであった。ウラルの彼方風あれて、とオルガンに合わせて声高くうたっていた若い母に、そ・・・ 宮本百合子 「菊人形」
・・・ そうして、彼は伊太利を征服し、西班牙を牽制し、エジプトへ突入し、オーストリアとデンマルクとスエーデンを侵略してフランスの皇帝の位についた。 この間、彼のこの異常な果断のために戦死したフランスの壮丁は、百七十万人を数えられた。国内に・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
出典:青空文庫