・・・ と、小沢はもう探すことは諦めて、係員に言った。「――チケットなしでも渡して貰えますか」「渡せんな」 香車で歩を払うような、ぶっ切ら棒な返事だった。「預けた品はわかってるんですが……」「ふん、どうせ闇のもンやろ」・・・ 織田作之助 「夜光虫」
・・・その衝立をまわって、多勢の係員のいるところから、また一つドアがあって、その中に課長が一人でいた。デスクにむかい、折目の立った整った身なりの四十がらみの人であった。 中野重治が、訪問のわけを話した。作家としての生活権を奪われることは迷惑で・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・ 事務室で、チリチリとベルが鳴り、係員がハアハア、ハアハア、と一種の玄人らしさで返事している、あのデンワで、この多忙、繁雑、非能率な国鉄運営の難事業を処理しているのではないだろうか。 各種の軍事施設は、おそらく優秀なラジオをもってい・・・ 宮本百合子 「みのりを豊かに」
出典:青空文庫