・・・ これでは困ると思ってしまいに、体を動かしたり、目を瞑ったりして聞きしめようとしているうちに、話し手は、また、一番初めと同じ勢のいい、賑やかな声で、 それ故、あなたがたも、皆修養して、立派な人格の所有者とならなければなりません。・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・却って、このことがきっかけとなって、友松円諦のような者や、農村自力更正修養団の思想やがはいりこむことも予想される。 この間、プロレタリア作家の徳永直と、これはプロレタリア短歌を専門とする渡辺順三とが、東北飢饉地方を見学に行った。私は断片・・・ 宮本百合子 「村からの娘」
・・・ 毎日のプログラムの内容、又講演、修養講座の内容等について、文化的な面から見れば、今日の『キング』、『日の出』の内容に対しておのずから発する感想が屡々誘発されざるを得ない。大衆の要求に沿うた内容ということは、いずれの場合でも決して、現代・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・母は自分の父を追懐することの多くなった晩年に於て、祖父が果した文化的な役割の、そういう新しかった面の高い価値を評価することを知らず、ただ祖父の位階勲等や、祖父の発意でたてられたある修養団体で読み上げられる「創祖西村茂樹先生」の面でだけ評価を・・・ 宮本百合子 「わが母をおもう」
・・・多分広告に、修養のために読むべき書だというようなことが書いてあったので、子供が熱心に内容を知りたく思ったのであろう。 私はとりあえずこんなことを言った。床の間にさきごろかけてあった画をおぼえているだろう。唐子のような人が二人で笑っていた・・・ 森鴎外 「寒山拾得縁起」
・・・己にはなんの修養もない。己はあの床の間の前にすわって、愉快に酒を飲んでいる。真率な、無邪気な、そして公々然とその愛するところのものを愛し、知行一致の境界に住している人には、はるかに劣っている。己はこの己に酌をしてくれる芸者にも劣っている」・・・ 森鴎外 「余興」
出典:青空文庫